考えごと

散歩、ポエム、むらさき。

2021-01-01から1年間の記事一覧

春眠は暁を忘れる

空が白いと思った。鴉の声のする方、電線の向こうの空を見上げた。明け方の空が虚無を連れて来ていた。硬直した体とは対照的に、眼球は軽妙に往来を行き来する。周囲を包み込む過剰な静けさの出処を探すと、辺り一帯の土が柱を作り凍っていた。そのまま世界…

悪魔たちの善´

耳が悪いのか、私の耳に忍び寄る大学教授らの講評は専ら職業作家の為の効率性の言論ばかりであって、純粋芸術の為の言論とは程遠いようである。学問として実践芸術をやっている私のような人間──何故だか少数派のようだが──からすれば、ガンプラの売り方の話…

陽溜まりの詩

人知れず書き置きを残すだけの静まり返ったブログでも未来的にパブリックであることには変わらないので、何処にも行き場のない文章がメモ帳に堆積してしまいます。山積みの文章を時系列順に整理したくとも日付不明の走り書きの多さに困り果て、今更ながら日…

ピース

私たちはカメラを向けられるとなぜピースをするのか。諸君は考えたことがあるか。誰に教えられたかも覚束ないだろう。このような文化侵略性をひとたび知覚すると何気ないピースサインが恐ろしさを帯びてくる。仄聞するところに拠ると、世界に名高い平和主義…

魘夢記

二回目のワクチン接種副反応に依る熱譫妄の為に二六時中沼田打ち回り、得体の知れぬ脚本を夢幻の中で書いていたような記憶があるが高熱に於いて二時間が六時間にも感じられて時間は伸びたり縮んだりするのかと思って俺の苦しみを悪戯に伸ばすのは何処の誰だ…

盲の詩

我々がいつも美しくあらなければならないのはなぜなのか。なぜ醜くあってはならないのか。それが病巣なのだ。我々の醜さなど今更何を覆い隠そうというのだ。欺瞞などは無為だ。我々の存在が無為であることの証明をしたいのならば他所でやってくれ。そんなも…

交換可能な生活

現代日本人は日本人の思想的ネオテニーであって、日本人とは殆ど別種です。狼が犬化したように、家畜化され牙を削がれ調教された日本人の情け無い様に落胆するのは哀しみゆえ。地を這う蟻が鳥のようには空間を認識できないように、ひとの頭の悪さについては…

戯言

時間を溝に捨てると溝に時間が溜まって行きますので、いつか溝浚いをしたときにかつて捨てた時間が見つかります。ハムスターが頬にひまわりの種を蓄えるのもこれと同じ原理ですから、時間を溝に捨てるというのも実は建設的な話になります。ですので、これを…

紫陽花が青い理由

不寛容な雨が缶酎ハイを限りなく薄めて行く。精神的潔癖、精神以外が潔癖であるということなどないだろう、と思う。いずれにしても肉体は穢れているし、肉体は救えない。我々の肉体に清潔などあり得ない。精神だけが存在している限り、肉体的闘争も政治的闘…

狂言

好きになるのは辞めてくれ。嫌いになるのも辞めてくれ。人と人が隣り合うことが美しい、そういうことを思いたいだけなのだから無思慮な暴力は辞めてくれ。浅ましさの為に悪辣たる暴力を振り撒いている自覚はないのだろうか。直ちに自省を以て恥ずべきである…

熱放射

上辺の友人を増やす術を覚えても、本質的な友人というのは小手先の小細工では増えない。マインドの問題ではなく、ある種の確率と双方の日々の鍛錬によって成就する。責任を転嫁するつもりはない、私のせいなのだ。私の精神は日々の鍛錬を怠っており、そもそ…

福呪草

一人でも多くの人間に幸せになって欲しいと心の底から思う。勿論幸せな人間を見れば祝福の感情が湧き上がる。綺麗事、というよりは狂気染みた博愛主義のようなもので、私の存在に関わらず既に幸せな人間に対しては私は何も寄与する必要がないのだという安堵…

泣言

眠れない夜には眠れない夢を見たことにしている。近頃はよく眠れるけれども、その代わりなのか良くできた夢を見る。大抵は良い夢は見ない。良い夢でも悪い夢でも一人で見る夢なら、大して変わりはない。理由もなく疲弊している。いくら寝ても寝足りない。多…

譫言

毒と云うのは大変危険なものですから、例え空に向けてでも、ひとこと毒を吐くと空気は忽ち腐るものであります。どうしても毒を吐くのが抑えられないのであれば、他人様に迷惑を掛けずに便所などで済ませるのが礼儀というものですが、そう云う手合いに限って…

花印

俺と云う一人称が好きではない。俺の「れ」が何だか命令形のような傲慢な響きがある。第一、女は使ってはならない一人称を現代社会では差別と呼ばずに何と呼ぶか。一人称に僕と言うのも好きではない。シモベと読ませる言葉を一人称にするのは気分が悪いし、…

興白き事をして暮すべき

「人間一生誠に纔かの事也。 好いた事をして暮すべき也。 夢の間の世の中に好かぬ事ばかりして苦を見て暮すは愚かなること也云々…」 拝啓、先生。先生は煙草を吸う度にこういうことをよくぼやいていましたね。背筋のくたびれた先生は、あれから好きなことを…

海亀のカップスープ

単細胞生物の死の瞬間の映像を見たことがある。死と同時に肉体と外界との境界の殻が溶解して生命が世界と溶け合う。水分中の生き物であるから、砂糖水のように溶けた肉体と世界とが究極的に混じり合って一つになる。下層ディレクトリが上層ディレクトリに移…

怠惰礼賛

尊敬に似た畏怖。尊敬に似た卑屈。胸の底から湧き出るニヒルを可能な限り無意識の方へ押し遣って理性的に拵えた尊敬を建前にするが、結局ニヒルを正当化し主観的な価値判断を主観の名の下に確定する。そういう独善的な態度に嫌悪感を感じているが、過剰な道…