考えごと

散歩、ポエム、むらさき。

泣言

 眠れない夜には眠れない夢を見たことにしている。近頃はよく眠れるけれども、その代わりなのか良くできた夢を見る。大抵は良い夢は見ない。良い夢でも悪い夢でも一人で見る夢なら、大して変わりはない。理由もなく疲弊している。いくら寝ても寝足りない。多分、煙草を辞めた方が良い。あれは身体に悪い。記憶が飛ぶくらい酒を飲むと何故記憶が飛ぶのか分かった。目を閉じて目から入る記号をシャットアウトすると時間認識は飛び去るらしい。感傷は言葉に圧縮できるからだ。でも酒は辞めなくても良いだろう。飲まねばやってられないような夜もあるから。

 鏡を覗き込むと以前よりは落ち着いた顔つきがある。以前?昔はもっとなよなよして虚勢を豆腐に貼り付けたような顔だった気がするが、思い出せない。思い出すことを拒否しているからだ。写真も残していない。写真は嫌いだ。鏡も見なくなった。出掛ける前と後で一日二回。鏡を見るという儀式は、自己認識にリセットをかける。

 何処か、波の音が聞こえる旅館に泊まりたい。海岸以外には出掛けずにただ寝ていたい。人生は偶に必要もなく海に出掛けないといけないんだという気がする。やることも思いつかずに波の音だけに耳を傾けるような時間が誰にでも必要だろう。きっと変なことはしないから適当な女と旅行をしたい。それで何を考えるのか教えて欲しい。でも変なことをしてしまうだろうけど。とにかく、恋人を作りたい。誰でもいいと思いながらも選り好みはしてしまう。砂漠の砂。浜辺の砂ではなくて砂漠の砂ならば、貝殻や硝子片や足裏に突き刺さる不純物が入っていなくて裸足で歩けるからそういう人ならば誰でもいい。蠍には気をつけよう。前の人は今でも好きだが、苦しむのは嫌いだから忘れてしまうのだ。薄情でありたいものだ。