考えごと

散歩、ポエム、むらさき。

盲の詩

 我々がいつも美しくあらなければならないのはなぜなのか。なぜ醜くあってはならないのか。それが病巣なのだ。我々の醜さなど今更何を覆い隠そうというのだ。欺瞞などは無為だ。我々の存在が無為であることの証明をしたいのならば他所でやってくれ。そんなものは趣味だ。趣味で他人を傷つけるなら罪悪だ。労働をしなければならない。肉体の浪費。美などは虚構だ。美などくだらない。美がくだらないのはお前の人生がくだらないからだ。お前は虚構の信奉者だ。我々の人生に価値がある瞬間など一度でもあったか。ある訳がない。人生に価値があるのなら労働などというのは存在しないからだ。だからお前は金銭を求めるのだ。金銭などは我々に価値がないことの証拠ではないか。欲望の贋造だ。我々は虚構の信奉者だ。羽虫が蜘蛛の巣から羽搏き逃れることなど不可能なのだ。だから何処もかしこも礼拝者だ。そら、賛歌を歌え。

 俺が死などを望むわけがない。思想が俺を拒むのだ。だが俺は思想の器だ。執行者の機械だ。感情を伴う機械は憐れだ。一方お前は愚行の増幅器だ。生きることなど恥晒しだ。だが死などは余興だ。だから時間に救いはない。生きるというのは一体どういう気持ちなのだ。俺はそれさえ知らぬ。詩を詠むほかに人生を知る手段など知る由もない。瞼の裏に薄暗く輝る焔が見える。時間にはあり得ぬ予感。救済はどこなのだ。欲するものが手に入らぬうちはまだ夢が見られる。だが手に入れたものは失う。手は朽ちる。死は公平だ。だから人生は無為だ。峰に達した後は降る以外の道はない。道などを求めるからだ。

 美はいつも俺を困らせる。美がなんだ。美はお前を救うのか。お前を救うのは行政だ。現実を見ろ。ただ生きるだけが何故こうも苦しいのだ。設計が悪い。先祖が悪い。国家が悪い。だが悪は死者ゆえに不死なのだ。清算の義務などは御免だ。呪いは不運な落石だ。記憶はいつも俺を苦しめる。記憶などは渚だ。過去などは虚構だ。だが語り継いだ虚構ほど恐ろしいものはない。なぜならばそれは死者だからだ。死者は不死だ。生者の弱さはいつも救い難い。生者が生者を救うなど畏れ多い。なぜならばお前は人間だからだ。人間というやつは破壊しか覚えぬ。死ぬまで抗えぬ性なのだ。