考えごと

散歩、ポエム、むらさき。

狂言

好きになるのは辞めてくれ。嫌いになるのも辞めてくれ。人と人が隣り合うことが美しい、そういうことを思いたいだけなのだから無思慮な暴力は辞めてくれ。浅ましさの為に悪辣たる暴力を振り撒いている自覚はないのだろうか。直ちに自省を以て恥ずべきである…

熱放射

上辺の友人を増やす術を覚えても、本質的な友人というのは小手先の小細工では増えない。マインドの問題ではなく、ある種の確率と双方の日々の鍛錬によって成就する。責任を転嫁するつもりはない、私のせいなのだ。私の精神は日々の鍛錬を怠っており、そもそ…

福呪草

一人でも多くの人間に幸せになって欲しいと心の底から思う。勿論幸せな人間を見れば祝福の感情が湧き上がる。綺麗事、というよりは狂気染みた博愛主義のようなもので、私の存在に関わらず既に幸せな人間に対しては私は何も寄与する必要がないのだという安堵…

泣言

眠れない夜には眠れない夢を見たことにしている。近頃はよく眠れるけれども、その代わりなのか良くできた夢を見る。大抵は良い夢は見ない。良い夢でも悪い夢でも一人で見る夢なら、大して変わりはない。理由もなく疲弊している。いくら寝ても寝足りない。多…

譫言

毒と云うのは大変危険なものですから、例え空に向けてでも、ひとこと毒を吐くと空気は忽ち腐るものであります。どうしても毒を吐くのが抑えられないのであれば、他人様に迷惑を掛けずに便所などで済ませるのが礼儀というものですが、そう云う手合いに限って…

花印

俺と云う一人称が好きではない。俺の「れ」が何だか命令形のような傲慢な響きがある。第一、女は使ってはならない一人称を現代社会では差別と呼ばずに何と呼ぶか。一人称に僕と言うのも好きではない。シモベと読ませる言葉を一人称にするのは気分が悪いし、…

興白き事をして暮すべき

「人間一生誠に纔かの事也。 好いた事をして暮すべき也。 夢の間の世の中に好かぬ事ばかりして苦を見て暮すは愚かなること也云々…」 拝啓、先生。先生は煙草を吸う度にこういうことをよくぼやいていましたね。背筋のくたびれた先生は、あれから好きなことを…

海亀のカップスープ

単細胞生物の死の瞬間の映像を見たことがある。死と同時に肉体と外界との境界の殻が溶解して生命が世界と溶け合う。水分中の生き物であるから、砂糖水のように溶けた肉体と世界とが究極的に混じり合って一つになる。下層ディレクトリが上層ディレクトリに移…

怠惰礼賛

尊敬に似た畏怖。尊敬に似た卑屈。胸の底から湧き出るニヒルを可能な限り無意識の方へ押し遣って理性的に拵えた尊敬を建前にするが、結局ニヒルを正当化し主観的な価値判断を主観の名の下に確定する。そういう独善的な態度に嫌悪感を感じているが、過剰な道…

風吹く夜は眠りなさい

風が吹いている。父の手製の風車が、小さな妖怪が笑うかのように不穏な音を立てている。建て付けの悪い家中の窓という窓、雨戸という雨戸が、鈍い音を響かせている。当然二階ではあるが、外から誰かが叩いているかのような錯覚に陥る。 この家に引っ越してき…

SNSについて思うこと

今の時代に個人ブログというものを何処かの誰かが読んでいるのでしょうか。有名人やら芸能人ならいざ知らず、ネット越しの何処の誰とも分からない凡人の、浅学な個人的な美学についてのブログを見る人のことを好事家と言うんでしょうね。私に熱心なネットス…

ある町の話

躊躇しながら敷居を跨ぐと、そこは他人の家だった。奥ゆかしく散らかった古い長屋である。住人と見られる幼女と目が合い、一瞬迷って丁寧に挨拶をした。 壁に書かれた書き置きに従って靴を脱いで、裸足で家の奥へと進む。そこには大戦以前から残る彫刻が町に…

夢・脳波・妄想

* 不思議の国のアリス症候群が起きるとき、あの感覚、あの記憶、あの声がリプレイされる。何でも良い、脳の中で独り言を大声で喋ってあの声を塗り潰さないと、あの声がすぐそこまで近づいてきて俺の不安を駆り立てる。恐ろしくもあるが、同時に彼が俺に何を…

ネパール人と喧嘩をした

上野は好きだ。この街ではカルト、ホームレス、藝大生、オカマ、異常者、外国人、様々な人間が暮らし、賑やかな通りを行き交っている。私は上野に程近い居酒屋でアルバイトをしているのだが、私のバイト先では何故かネパール人が沢山働いていた。 三つの店と…

失われし喫煙所を求めて

パンデミックによる新たな世界情勢の中で、東京五輪を延期にするか中止にするか議論がなされている真只中だが、昨年の7月1日東京五輪に向けた法改正に伴い上野の藝大の敷地内は全面禁煙となった。 受動喫煙防止という題目に不服はなかったが、喫煙所という…