考えごと

散歩、ポエム、むらさき。

心臓の骨

 セックスか散髪をしたい。或いは死にたい。或いはこの世の全ては壊れやすく、当然、俺はその内のひとつだった。光は電気装置の爛れた廃棄物。つまりアミューズメント。俺の生は既に執着の対象外へと──素直な言い方をすれば、エロい天使のように堕落した。俺は俺を不断に呪い続けなければ、生きる事が出来ない。痛みも恐怖もゲームの設定。表現と云うものの実体は人生なのだから、噛んだって獣の味しかしない。つまりバツが悪い。結末は偏に蒙昧としか言いようがない。永遠の夜が暖かければ、排泄的な思考は歩みを止めて──俺はただ、俺を動かす運命から赦されたい。快楽の奴隷はどうやら幸せそうだ。言葉はどこまでも騒々しい。死は脱衣。ようやっと重いだけのヴェールを、いち早く脱ぎ捨てたい。雛は順番を待っている。だから星は綺麗なんだ。だから、俺と踊ってくれ。死のダンス。逆立ちして詠んだポエム。言葉を飲み過ぎて胃が焼けたから、全てを吐き出したい。

 さあ、幽霊をぶん殴ろう。死後も来世も必要ない。必要なものは二つ、ヴァギナとペニス。表現は簡単だ。お前の人格を守るステイトメントをストリップショーの餌にしよう。俺が誰だか分からなくなってきた。多分、獣だ。か弱い女を犯せと神が命令する。何故なら、神はお前が吐いた嘘だからだ。カメラが回っている、早く踊ろう。薔薇色な人生を謳歌しよう。そして春が来る前にテロを起こそう。モラトリアムは野鳥に食い荒らされているのだから。害獣駆除は誇りある仕事さ。必要悪はただの三文字。拳を握ればお前は武器になれる。肉体の終着点はやはり暴力だ。言葉を正義と悪に分類する遊びも飽きたろう。なら、全部辞めにしよう。脳をミキサーにかけて純粋な獣になろう。お前はそれを求めている。そうしたら人間は最高さ。

 そろそろ希死念慮が恐ろしい。脳はじっくり煮込まれてまろやかになってきた。観念さえもここでは不可逆だ。暗闇で生活していると、金も銭も輝きを失っている。人間には希望が必要なのだから、ペンを握るしかない。頭蓋骨にも隙間はあるのだから、銃がなくとも人は殺せるのだ。人を殺しているのは一体誰なのだろう?──ひとつ言えることがあるとすれば、死にたい奴は味覚音痴だ。空気は味がしないのだから、偶には山にでも登るといい。人間に飼い慣らされると腹が空くけれど、我々は野良犬で在り続けると誓っただろう。俺はただ、ひたすらに、光を浴びたいだけなのだ。夢から覚めたらとびきり新鮮な肉を食いたい。物欲はないけれど、いつも欲しいのはスリリングな瞬間の連続だ。そう云う中で初めて眠りにつけるのだから、ひとつ可哀想に思ってくれ。今は慰めが傷口に滲みるから。怪我なんてした事はないけれど、多分俺の涙は味がしない。それを確かめることが出来たなら、もう泣く必要はないだろう。次の日には砂になるから。

 ──そうそう、あの時の言葉は嘘だった。お前には幸福になる権利がある。うっかり俺は権利を放棄したけれど。頭は右回りに、血管を締め付けながら回転している。夏の熟れた西瓜のように。今まで恐怖が俺を生かしてきた。明日からどう生きれば良いかなんて、保険の先生だって教えてくれない。地獄に行くなら一人旅が良いさ。次いでに誰かの不幸を盗んで行こう。花は散るのを怖がりはしない。だから俺も死を怖がらない。そうしたら毒ガス帯だ。お前は美に近付いてはいけない。順番を間違えてはいけない。俺は結局、戻る道が崩れているから幸福が鼻の先にあると盲信するのだ。野良犬も美しければ本望だろう。ところで心臓に骨はあるのか?柔らかいものが丈夫じゃないか。女も子供も。邪魔な杭は引っ張り抜いて、軽くなった身体で新しい世界に飛び移ろう。だって、これはダンスだ。