考えごと

散歩、ポエム、むらさき。

人間卒業式

 今朝は唐揚げになる人間の夢を見た。タイトルは「人間卒業式」。なんで夢にタイトルがあるのかは知らない。卒業する彼と、最後の会話だと思って話していたら、カセットテープだったの、最後まで理解できないな。皿に体重分盛りつけられたって、男にだって食えない据え膳のひとつやふたつあるでしょう。

 エコーって寄せ集めの葉っぱなんだって。昨日、居酒屋で聞いた。だから残響なのかと早合点したけど、後で思い出して調べたら環境に優しくてエコだからって。そういう優しいの押し売りって、なんとなく二枚舌な感じ。金貸し屋はバカみたいなCMばっかり打って、ご利用は計画的にって言わなくなったような。私もそういう仕事してくのかな。学生支援機構が儲かりまくりってデマに怒ってる情報弱者とか、それを焚き付けてるひとたちって何がしたいんだろう。ピアノの単音が全部悲しく聞こえるのは何でだろう。チクチクタクタク。二つの針の音。メトロノームみたいに二つの時計は同期しない。だって時間って堅いから。時計の方に私の心臓が同期するのかも。そう思ったら気持ち悪くて寝室の時計の電池を抜いた。だって、時計は物質社会の象徴だから。人間って自分のこともよく知らないものだけど、掲げた理想に共鳴してくんじゃないのかな。理想に体を合わせる。体が持たなかったらそれまでで。

 

 なんだっけ、昨日まで考えていたこと。人間がただの黒一色の切り絵になったこと。好きに色々あったっていいし、言葉を選んで選んで嘘ついてまで笑わなくたっていい。なんで私は翼が欲しいんだろう。ヘドロみたいに酔ってしまいたいのに。お金を払って一人になる。一人になるためにお金を払う。そういう世界観で商売しているのはどこの誰だろう。とにかく空気が悪くて家を飛び出す。客体化した私の存在価値は何だろう。お金に交換できる程度の価値しかない。世界に必要とされるのもそれはそれで面倒で、日が沈んでいく。今日という日をどれ程有意義に過ごせたかとか、そういうのよりも普通に友達が欲しい。お金のあるなしとか、頭の良し悪しとか、顔の良し悪し、男か女か、どうたらこうたら、そんな調子で楽しいんですか? 何をそんなにグリッド引いて配置していくんですか。

 ダメになってしまった脳で何を考えたって何もかも無駄ね。自由って一体どこに隠れてしまったんだろうね。時代が変わろうとも、人間の本性は変わらないし、弱者の不幸も変わらないし、目を開けても呪詛、閉じても呪詛。世の中は見なくていいものばかり。ホワイトキューブに綺麗なものを閉じ込めていって、外を歩けば吐瀉物まみれ。労働宣言はドナドナムード。泥水を飲んだって別に美味しくはないし、現実が綺麗だったことを少しでも思い出したい。あなたは他人の骨を髄まで絞ったスープを美味しいと言って笑えるようでよかったね。

 

 私は火が好き。火は言葉を燃やしてくれるし、この世界でこれから起こり得る幾つかの可能性を燃やしてくれるし、その遺灰を刹那的で空虚な安らぎと交換してくれる。過去から未来の中に、もしくは未来から過去に中にあっても、純粋に空虚な安らぎ。化学変化って破滅に似てる。湿っぽい言葉遊びや、錯乱した人間遊びではない現実。燃やすべき幾つかのものと、決して燃やしてはならない幾つかのものを、私の命と比較して、悩んだ末に火の中に焚べる。燃やしちゃならなかったものも、多分、色々あった。でも、そうやって暖を取り、冬を凌ぎ、新しい春を祈願する。人類が生き残ってきた何万年の記憶が体に刻まれているような、そういう気持ち。

 食卓では私は家族と「静か」を食べる。家庭不和が原因だとしても、静かな方が好き。ねずみの家族を見て、汚れているとあなたは思う? 私は悲しいと、いえ、羨ましいと思う。小さな心臓が小さな体のモーター。幸福と不幸は併せ呑んで口の中。複雑なものは要らない。一先ずの巣があればいい。からっ風で死んでしまってもいい。だって人生は偶然だから。

 

 私は、灰にならないと眠れない。私の中の悪魔的な部分が、私が単純になるのを許さない。落下、何もない、底なしの、オーバードーズは薬に限らない。水さえもドラッグになる。それなら、壁に腕を突き刺す。グラスは割れて、水は流れて、魚は死んだ。私が殺した。

 翅があるのに旋回してる、白熱灯に酔ってる、虫。きっと平衡感覚を失って、底なしの穴から脱出しようと躍起になってる。虫の群れ。人の群れ。五本指の悪魔たち。世界の穴から溢れた血液。悪魔の血は九割が悪意で、残りは着色料なの。刃物を体の見えないところに当ててみて。自分を取り出してみて。溢れ出たものが何色か確かめてみて。

 私の脳を、私の人生を、私の感性を、私の道徳を、デザインする。私の改造と、それから私の治癒をする。もう一度生まれ直した日に、私は親につけられた名前を変えようと思う。ドナドナは、牛を追うための掛け声だ。子牛は己の不遇を叫んだ。でも叫び声は聞こえなかった。私にとっては、全部が全部、遺書のつもり。だから私は嘘をつかない。私の叫び声は多分、聞こえない。こんなに叫んでるのにね。誰か聞こえてますか?コエ、届いてますか。聞こえてたら返事をして。誰か。

 

「……シー、集団墓地では静かに。」